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【ダンサーのためのボディメンテ vol.2 】ダンスは練習あるのみ… ではなかった?

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ダンスは、見た目以上にハードな全身運動です。キレとスピード感のあるダンス、アクロバティックなダンスだけでなく、優雅な動きで魅せるダンスもまた、美しい姿勢の維持や動きのコントロールに、たくさんの筋肉や関節を使っています。
そこで、今回はダンサーが知っておくべき身体のケアや、ケガを防ぐために気をつけておきたいことを『ダンサーのためのボディメンテ』シリーズとして、3回にわたってお届けします!
 

ダンスは上手くなりたければ練習あるのみ?

近年、ダンスが中学校の保健体育における必須科目となるなど、娯楽としてだけでなく、教育的価値や効果も認められるようになり、習い事としての人気も高まっています。“踊れる”がクールなこととしてとらえられるようになって久しく、クラシックバレエやジャズダンス、社交ダンスといった比較的古くから国内でもダンススクールが存在したジャンルはもちろん、ヒップホップダンスをはじめとする多様なストリートダンス、ベリーダンス、タンゴ、フラダンスなど、地域色やバックボーンもさまざまな幅広いダンスジャンルにおいて、本格的なダンサーを目指す人も増えてきています。

キレのあるダンスでみせるアイドルグループの活躍や、ダンスバトル、コンテストイベントなどのパフォーマンス集団。またプロ顔負けのクオリティの高さを誇るものまでみられるようになった投稿ダンス動画など、これら時代のコンテンツに触発され、ダンサーに憧れてダンスを始めたという人も多いでしょう。

身近なところで始められるものとなったダンスですが、それは表現活動であるとともに、想像以上にハードな全身運動でもあります。早く上達したい、発表会やコンテストがもう間近に迫っている、そうしたシーンではとくに長時間の練習に取り組むことがあるでしょう。

たしかにダンスを上達させるためには、地道な練習あるのみであることは間違いなく、丁寧に時間をかけて基礎を固め、寸暇を惜しんで努力した人こそが高いパフォーマンス能力を得て、輝く存在になるものです。

しかしただやみくもに練習の負荷を増やせば良い、激しい練習を長時間続ければ上手くなるというわけではありません。上手くなるどころか、そうした無理を重ねていると、最悪の場合、ダンスを続けられなくなる可能性すらあります。中には日常生活に支障をきたすようなケガや故障を抱えてしまう人もあり、自分は大丈夫と過信せず、十分注意することが必要です。

そこで今回は、ダンサーとして知っておいてほしい練習のしすぎに起因する危険、疲労との付き合い方やそのケアについて解説していきます。

ダンスが与える負荷を知る

ダンスでは、日常生活であまり使用しない部分の筋肉や関節・腱も含め、あらゆる部位を使った動きで魅力的な踊りをつくりあげていきます。そのため適度にバランス良く実践している範囲内であれば、健康的でしなやかに鍛えられた身体を作ることに寄与し、基礎代謝の向上にもつながるなど、大いにプラスの効果を得ることができます。

しかし何事も過ぎたるは及ばざるがごとしというように、同じ動作を繰り返し練習しすぎることで、特定の部分にかかる負荷が一定レベルを超え過度になったり、疲労が蓄積されたまま回復を待つことなく、さらに激しい力がかかる動きで身体に大きなダメージを与えたりしてしまうと、痛みを伴うような不調を起こすようになります。

これはダンスに限ったことではなく、身体が資本のスポーツに共通して言えることですが、本格的に練習に取り組めば取り組むほど、常に自分の身体状況と向き合い、上手くメンテナンスを行っていくことが重要となります。少々の痛みは仕方がないもの、疲れはあるけれど練習は休めない、誰しもそのように考えがちですが、そうして身体の声に耳を傾けず、不調をそのままにしておくと、深刻なケガや故障に発展してしまうこともしばしばなのです。

気をつけたい疲労骨折

たとえば、少々の痛みなら我慢できるからと、膝に違和感をおぼえながらも、迫る本番に向けてハードなレッスンを変わらず続けた結果、脛骨など膝周りの疲労骨折を起こしてしまうことがあります。ダンサーの場合、ジャンルにもよりますが、腓骨や中足骨、種子骨、大腿骨頭、足舟状骨といった部分が疲労骨折を起こしやすいといわれています。いずれも足、下肢にある部位で、ステップやジャンプなど、足をよく使うダンスならではと考えられるでしょう。

疲労骨折は、いわゆる通常の骨折が1回の大きな衝撃による外傷として起こるのに対し、同じ部位に繰り返し加わるさほど大きくはない力によって、骨にひびが入ったり、さらに進行して完全に折れてしまったりした状態をいうものです。過度の負荷が短期的、かつ長時間、連続してかかることによって発生する、オーバーユース(使いすぎ)が原因の骨折です。

整形外科を受診すれば比較的容易に診断がつきますが、発生するとその部位を中心に安静に保つなど、練習を中止しなくてはならなくなるほか、治療の開始が遅れると慢性化してさらに治りが悪くなり、再発を繰り返してしまう、ダンスなどそのスポーツができなくなることもあります。手術が必要と判断される場合もあり、治療とリハビリに長期間を要してしまうことも少なくありません。

同じ部位の使いすぎにならないよう、練習メニューを工夫するなどして過度な負荷がかかり続けるのを防ぐほか、ストレッチを入念にして柔軟性を高めるといったことが予防の基本です。起こさないことが第一ですが、早期発見も復帰を早め、予後を改善するポイントになりますから、知識をもって注意しておくようにしましょう。

初期には、少し休息をとったらほとんど痛みを感じなくなる場合も多いので、踊っている際に慢性的な痛みをおぼえるなら、早めに疲労骨折を疑って医療機関に相談してください。

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オーバートレーニング症候群とは

疲労骨折以外にも、練習を熱心にやり過ぎたことで生じるデメリットがあります。できていたはずの動きが最近できなくなった、踊っている時は平気なのにレッスン後に身体がいつも痛む、不眠や食欲の低下、立ちくらみ、息切れなど心身の不調がある――そうした感覚を覚えてはいないでしょうか。もし該当するなら、「オーバートレーニング症候群」かもしれません。

このオーバートレーニング症候群を発症すると、軽症のうちは日常生活で目立った支障がないものの、できていたダンスができなくなったり、すぐに疲労感が出てレッスンについていけなくなったりといった症状が現れます。ここで必要なのは「休息」ですが、パフォーマンスが落ちていることに焦りをおぼえ、さらに無理をして練習を重ねてしまうダンサーも多く、気づかぬうちに自分でますます症状を悪化させてしまいがちです。

このままではダメだ、もっと練習しなくてはと負荷をかけるほどに症状は重くなり、ダンスをしていない時にも息切れがしたり、手足にしびれを生じたり、微熱や抑うつ症状を発することもあります。この症状が出やすいのは、大きなイベント前などで集中的な練習を重ねており、身体に過剰な負荷がかかっている時です。

また、練習量に変化はなくとも、睡眠不足やダイエットによる栄養不足など、身体の健康バランスが崩れていて疲労が回復されにくい状態になっている時も起きやすいといわれています。風邪などをひいて一時的に休んだ後、十分に調子が戻っていないのに激しい練習を再開してしまった場合も発症リスクが高く、注意が必要です。休んだ分を早く取り返さなければと、真面目で練習熱心な人ほどかかりやすい症状ともいえるでしょう。

異常を感じたら早めにしっかり休息をとること、日頃の生活習慣から規則正しく、心身のバランスを整えることを心がけ、上達を焦りすぎないことが重要です。日々の練習やストレッチ、筋肉トレーニングなどの積み重ねはとても大切なものですが、どれも一定以上の筋肉を壊し、消耗させる行為であることも考えなければなりません。よりダンス向きの身体になったり、技を身につけ美しく実践できるようになったりといった効果は、その破壊に対する回復の過程で出てくるものです。その意識をしっかりもち、練習と休息をセットで大事に考えましょう。

適切な練習量、時間って?

疲労骨折やオーバートレーニング症候群にならないまでも、漫然と練習量ばかりを増やすのは考え物です。急に身体に力が入らなくなったり、頭がぼうっとしてあまり考えられなくなったりしているのに、ただ練習時間を増やせば上手くなると継続しても、効率が落ちていくばかりで成果は上がらず、疲労だけをため込んでしまいます。

では、どのくらいの時間が適切かという問題になりますが、肉体面でも精神面でも「90分」がひとつの目安とされており、これを超えるとオーバートレーニングになったり、メンタル面の集中力が切れたりするとみられています。集中が切れた状態で練習を続けると、足をひねるなど不注意でケガをするリスクも急激に高まります。メニューとして賢くコントロールし、限られた時間の練習に集中して取り組んでこそ、上達の道が開けるのです。

まとめ

いかがでしたか? ダンサーにとって日々の練習の積み重ねが重要であることはいうまでもありませんが、過度な練習で資本の身体を壊してしまってはベストなパフォーマンスをみせることができません。練習のしすぎにならないようコントロールすること、心身のバランスを整えるメンテナンスをきちんと行うこと、そうした力も非常に重要だということを理解しましょう。

痛みがあったり、疲労が溜まっていることを感じたりしているなら、無理に練習を続けず、軽めのメニューにしたり、積極的に休息をとったりすることが大切です。

痛みをかばって練習をしても、患部の状態を悪化させるほか、悪い癖がつくもとになるばかりです。また、身体をコントロールする力が落ちている疲労状態で練習をすることも、思わぬ大きなケガにつながりやすく危険です。

日頃からダンスにベストな心身の状態をつくるよう心がけ、焦らず、集中して練習に取り組みましょう。たくさん練習しさえすればという根性論に陥らず、賢く、気持ちよく、練習を重ねてくださいね。

 

【ダンサーのためのボディメンテシリーズ】
vol.3はこちら >> 痛めやすいポイントを知って予防したい!ダンサーに多いケガ

 

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date : 2020.04.16
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