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世界で活躍! ヒューストン・バレエ プリンシパル加治屋百合子さんスペシャルインタビュー「バレエ上達の秘訣」!!

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加治屋百合子という偉大なバレエダンサー

yuriko_kajiya2アメリカの5大バレエ団の一つと言われるヒューストン・バレエでプリンシパル(最高位ダンサー)として踊る加治屋百合子さん。

加治屋さんは2002年に世界中からスターダンサーが集まるアメリカンバレエシアター(ABT)に入団後、2007年にソリストとなり主要な役で長年多くの舞台に立ってきたトップバレエダンサーだ。その後2014年にヒューストン・バレエに移籍し、現在はプリンシパルとして舞台に立っている。
2018年ローザンヌ国際バレエコンクールでは審査員も務め、ますます世界が注目するダンサーとしてその活躍は目覚ましい。

 

加治屋百合子さんに聞くスペシャルインタビュー「上達の秘訣」!!

東京・表参道のAngel R Dance Palaceでは、これまで3度にわたり、加治屋さんによるスペシャルワークショップを開催。

海外の一流バレエ団でトップとして踊る加治屋さんだからこそ伝えられる、身体の使い方や魅せ方、一人ひとりをしっかりと見てその人の美しさや良さを引き出すクラスは毎回大変好評だ。

Angel R Dance Palaceでのワークショップの際に、加治屋百合子さんにバレエ上達の秘訣を伺うことができた。日々バレエの上達を目指してレッスンを受けている全ての方に、きっとヒントとなる加治屋さんからのメッセージ。ぜひ受け取ってほしい。

 

自分が納得するところまでとことん練習し、自分自身の良さ、美しさを追求すること


ー日々、多くの舞台に立っていらっしゃると思いますが、舞台で緊張されることはありますか?


舞台に立つまでに、自分の納得のいくまで練習やリハーサル
をしてきているので「これだけやってきたのだから大丈夫、ちゃんとできる」と自分に言い聞かせています。でも、それは舞台に出るまでで、公演当日は緊張はもう無くなっています。

舞台に立つまでに、やれることは自分が納得するところまで全てやるということですね。上達の秘訣として、その準備の部分もきっと皆さん知りたいことだと思います。

上達の秘訣がわかったら、私もぜひ知りたいところです!(笑)。

でも、上達の仕方は人それぞれですよね。それぞれ皆さんの性格に合った方法があると思います。私は練習が好きなタイプなので、自分が納得するまで一つのステップを何度も繰り返しとことん練習しています。


自主練習もされますか?

自主練習は好きです。自分と向き合える時間が好きなんです。
バレエ団から与えられるリハーサル時間だけでは、絶対に足りません。いろいろな作品を踊る中で、ABTの時代にはもともと予定されたリハーサルが1回だけだったり、リハーサルなしということもありました! でも、そういう場合もあるのが普通ですし、それで鍛えられた面もあります。

バレエ団のリハーサル時間は、コーチが目の前にいて、自分の踊りや自分が探っていることに対して意見をもらったり、そこからまたさらに踊りを深めていくとても重要な時間です。
ですが、私の場合はその前に自分自身で探る時間が必要です。ステップを身体の中に入れ、探りながら、「どういうふうに音をとっていこう」「ステップはどんなふうに…」と踊りを深めていきます。それだけステップをしっかり身体に入れないと、舞台に立った時に余裕がなくなってしまうんです。
10代、20代の若いダンサーは、特に舞台に立った時にそういった部分を感じます。踊りだけでいっぱいいっぱいになってしまう。それをなくすのは経験でもあるのですが、やっぱり身体にしっかり入れるということが必要ですね。


-実際に、加治屋さんが今回のワークショップの中で、オーロラ姫のヴァリエーションを教えてくださった際に「何でこのステップなんだろう?」ということを考えるという一言に大変驚きました。そうやって考えることで自分の踊りになるんですね。通常クラスで習う場合には、ただ振りとして覚えて踊っていることが多いんじゃないかと思います。

ステップだけこなすのは、表面的にはできてしまうんですよね。そこを深めて、どうお客様に感動を伝えられるかということがが大事ですね。
もちろん、私自身バレエを始めた頃からわかっていたわけではないですし、10年前に知っていたらもっと上手くなれていたのに!と思います(笑)。
でもそれは、年齢もそうですし、人生経験や舞台経験、そういったものが積み重なって初めてわかってくることなのだと思います。
私がクラスで皆さんに教える時には、それを少しでもシェアできればと思っています。私が先生という立場に立って教えている時は、全部さらけ出して伝えたいという気持ちでいます。

-そんなふうに思われるのは、どうしてでしょうか。

私自身のコーチからの影響が大きいと思います。
ABTでは、ロシアを代表するバレリーナだったイリーナ・コルパコワ(※)がコーチだったのですが、彼女は自分の知っていることを押し付けないし、例えば「私はこう踊った」ということもあまり聞いたことがありません。決してこれをこうしなさいとは言わない。そして、人を見てそれぞれに合ったアドバイスをしてくれます。自分の意思が合ってそれを曲げたくないというバレリーナにはあまり言わず、「知りたい」というダンサーにはたくさんのことを伝えてくれます。
そして、それを受け入れる姿勢も大事だと思っています。

(※)1950年代から70年代にかけて活躍した、ロシアを代表するバレリーナ。完璧なテクニックと詩情が融合したバレリーナと評されていた。


-クラスを拝見していると、生徒の皆さんが加治屋さんの言葉を聞いて、どんどん変化していくのを感じました。

今回のインタビューでは、加治屋さんの受け入れる姿勢や精神的なメンタルの部分もとても素晴らしいと感じていたので、そういった面でも上達の秘訣をお聞きしたいと思っていました。

バレエをやっている方に限らないことですが、日本では“歳を重ねる”ことにすごくネガティブなイメージがありますよね。私は、人は歳を重ねるごとに美しくなると思っています。日本では、アラサーやアラフォーという言葉がありますが、「なんでそんな言葉があるの?」と思うくらいです。
アメリカでは、歳を重ねるごとにネガティブなイメージはありません。もちろんバレエ団の中には私は年をとっているって言う方もいますが、私はそういうことを全く感じることはありません。

40代、50代、60代…とそれぞれの年齢で素晴らしい美しさがあり、それぞれ輝いていると思います。それが、大人のバレエにもつながるのではないでしょうか。

「私は●歳だから無理」ではなく、自分の年齢での美しさ、その歳の美しいバレエというものがあると思います。そんなことを考えながら踊ってみてはいかがでしょうか。

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-実際、加治屋さんはクラスの中でも「あなたの美しい角度がある」と仰ったり、ご自分も自分らしさを研究してきたことを常に伝えられていたように思います。

歳を重ねることが決してマイナスではないということと共に、自分を受け入れ、良さを自分自身がわかっているということも重要なのだと感じました。

海外で生活していると、コンプレックスは本当にたくさんあります。周りは手足は長いし、そんなにメイクも必要ないくらい顔も掘りが深いですし…(笑)。比べたらキリがないくらい。
私自身もそれですごく落ち込むこともありますし、色々なことを経験してきましたが、自分の良さというものが絶対に人それぞれにあって、自分がまずそれと向き合わない限り、わからないと思います。
バレエでは、先生が「どこが悪い」ということをたくさん言うと思うので、それで落ち込んでしまうこともあると思います。そこで大人になってからバレエを始めた方や大人になって復帰された方は、10代の子ども達と比べるのは体力的にももちろん無理がありますよね。でも、子どもとは理解力も見方も違うので、先生が言っていることを理解してご自分と向き合い、踊りの角度であったりそういった技術的なところから磨いていくと上達が速いと思います。

 

-きちんと理解した上で、自分の美しさを研究して上達していって欲しいということですね。
一方で、「ダンサーになりたい」「海外へ行きたい」と思っている若手のバレリーナ(16〜25歳頃)へのアドバイスとなるとまた違いますか?

一番、多感で難しい時期ですね。
私自身もそうだったのですが、その年代って焦りますよね。「どうしてこの子はできるのに、私はできないのだろう」とか、周りと比べることもすごく多い。
でも、踊り方が一人ひとり違うのと一緒で、伸び方も人それぞれで、早咲きの人もいればちょっと遅い人もいる。人を見て焦ってしまう気持ちはわかりますが、自分を信じてコツコツ積み上げていくことがとても大切です。焦ることで緊張感を得ることはいいことですが、ただそれだけだと上達には繋がらないと思います。私自身も、自分では遅咲きだったと思っています。


ー自分を信じ、コツコツやる。そして、加治屋さん自身が今世界中の人に感動を届ける憧れの存在として活躍されていることを思えば、遅咲き、早咲きは関係なく、若いバレエダンサーたちにとって自信につながる言葉になったのではないかと思います。

Angel Rでのレッスンはいかがでしたか?


個人的にはヴァリエーションのクラスがとても好きです。踊る要素が入っているヴァリエーションクラスでは、「あ、この人はこういう表情をするんだな」とか、生徒の皆さんの通常のクラスとは違う表情が見られることが私自身もすごく楽しいです。


-クラスでは、加治屋さんの一言で皆さんの心が「ぱっ」と変化し、動き出したのがわかりました。

もちろん基礎はすごく大事で、考えないといけないこともたくさんあるので、普段のクラスでも作品のように常に心を動かして…というのは難しいと思います。年に数回の今回のような普段のレッスンとは違うワークショップで、そういう気持ちだったり心の部分も思い出してもらえると嬉しいです。

日本人のダンサーは技術が素晴らしい方は本当にたくさんいます。ただ、コンクールなどを拝見していると技術はすごく上手なのに、心を動かして踊っている人はまだ少ないように思います。
それをどうやって引き出すのかということも、先生の言葉をどう受け止め自分のものにするかだったり、音楽の使い方やチョイスだったりするんだと思います。

それぞれお一人お一人が自分と向き合い、自分だけの美しさを見つけて頂けたら。そして自分にしかできない表現、自分の心を踊りを通してどう伝えたいのかを見つめて頂けたら、きっと上達に繋がっていくと思います!


-加治屋さんのレッスンで、きっと皆さんスイッチが押されたと思います。
貴重なお話を本当にありがとうございました!

 


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date : 2018.06.01
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