引き上げて固めるのではなく、様々な方向に動かす「バレエのための解剖学-背骨(脊柱)編-」
5~6㎏もある重い頭を支える背骨(脊柱)のS字カーブ
ダンサーにとって、ピルエットやジャンプをした時に安定感を作り出すのは「軸」のある強い身体。その「軸」とはどこにあるかと言うと、身体の中心にある脊柱(背骨)にあります。
元々、人間の脊柱は緩やかなS字のカーブを描いています。この脊柱のS字は完全な二足歩行をしている人間にしかないものです。他の哺乳類はもちろん、霊長類たちも脊柱は後弯(背中が丸まっている状態)しています。
人類の進化の過程で二足歩行をする中で、体にかかる衝撃を和らげるためにこの形にたどり着きました。
更に成人の平均的な頭の重さはだいたい5~6㎏。この重い頭を支え、衝撃をバネのように和らげるためにもS字のカーブは必要なものです。
バレエダンサーはS字カーブが無い!でも、痛みが出ない理由は?
しかしバレエダンサーはこのS字のカーブがなくなり、ほぼまっすぐの脊柱の形をしています。人間特有の生理的弯曲がなくなったとしても、ダンサーにはまっすぐな脊柱が必要なのです。最初に書いたように、「軸」となるのは、脊柱だからです。頭からまっすぐ伸びた背骨から、ポワント(トゥシューズ)でつま先に一点に立つことで独楽の様な軸が作られます。
バレエを小さい頃から習っていると、整形外科などの病院に行くと「ストレートネック(頸椎の生理的弯曲がなくフラットな状態)ですね。」と診断されることが多いと思います。これは、バレエの特性上、特定の動作や姿勢を維持し続けるので、それに体型が合わせて変化していきます。
脊柱の変化は頸椎(首)たけでなく、胸椎にも起こっています。胸椎は後弯(背中側にカーブ)しているものですが、バレリーナの胸椎はフラットになりやすいです。
しかしこのS字のカーブがなくても身体に痛みが少ないのは、それだけ常に軸を引き上げる姿勢をキープしているからです。さらに伸ばして固めているのではなく、様々な方向に動かし、背骨の可動域が広く柔軟性のある筋肉によって支えられているから様々な動きに身体が対応でるのです。
脊柱に軸を感じられる様になるためにできる事とは?
日常の生活でそこまで身体を引き上げるという意識を持ち続けるという事はなかなか難しいと思います。バレエのレッスン以外で、まずは自分の脊柱を様々な方向に動かし、自分の身体の中心に脊柱という軸が通っている、その背脊柱を立ち上げるということを意識してみて下さい。身体がふらふらすると感じるときは、背骨が大きく曲がっている骨盤が立ち上がっていないなど、どこかしら軸がずれているかもしれません。一度自分の姿勢を鏡でチェックしてみて下さい。
文/川本直枝(ピラティスインストラクター)
川本直枝プロフィール
6歳から岩手県盛岡市の黒沢智子バレエスタジオにてバレエを始める。全国のコンクールに出場、入賞。
大学に進学し、就職後、24歳の時にギランバレー症候群という神経が麻痺する病気に罹り入院する。完治し、退院後のリハビリの一環としてピラティスを始める。
26歳でBASIピラティススタジオに入社。Mat Course,Mchine CourseをBASI FacultyのYae、Nagi、Sheri Longから師事。グループレッスンからプライベートレッスンまで多くのレッスンを担当。約3年で100名以上のクライアントに指導。現在に至る。
川本直枝先生のピラティスセッション
https://www.angel-r.jp/private/pilates/
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tag : | タグ: バレエのための解剖学 |
date : | 2017.04.08 |
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