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【特別対談】鈴木竜 × 夏木マリ「作品を作り続ける理由」

現在クラウドファンディングという新たなかたちで、舞台芸術と社会の繋がりが希薄な日本を少しずつでも変え、素晴らしい日本のダンサーを海外へ広めようと挑戦しているダンサー、鈴木竜。

以前、その挑戦に関して書いた記事はこちら☞
新作「AFTER RUST」を成功させたい!鈴木竜の挑戦。

今回、その鈴木竜と、女優であり、歌手であり、作家、舞台、演出、、、など様々な分野で芸術を追求し続ける夏木マリから、鈴木竜への応援コメントとともにスペシャル対談が行われた。鈴木竜も教えをしているというダンススタジオ「 DANCE WORKS 」協力のもと、2人の出会いから作品への想いまで語られた深い内容となった。

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はじめに… 鈴木竜より

「応援ありがとうございます。鈴木竜です。3月19日からクラウドファンディングを開始し、これまでに多くの方にご支援と励ましのメッセージをいただきました。ありがとうございます。

今回、夏木マリさんから応援の言葉をいただきました。マリさんが主宰するカンパニーMNT(マリ・ナツキ・テロワール)には僕もパフォーマーとして参加しており、ダンサーの僕をよく知っています。対談形式のインタビューを通して、ダンサー鈴木竜のこと、海外で作品を作るということ、ダンサー自身が資金を募るということについて、みなさんに触れていただければ幸いです。」

 

鈴木竜の印象「ダンスが上手すぎて、嫌味っぽかった(笑)」

:今日はお時間を設けてくださりありがとうございます。夏木さんとのお付き合いは5年ほどになりますが、いつも応援してくださり嬉しいです。

夏木:もう5年ね。私のコンセプチュアルアートシアター「印象派」のオーディションに来た時に初めて会ったのよね。その時、しなやかな体だなあと思いましたよ。オーディションではただ歩いてもらうというのがあるのだけど、歩き方ひとつ見るとその人の生き方がわかる。竜くんは器用だし、私は好きな踊りだなと思った。その器用なところが嫌味っぽくもあるけどね(笑)でも一緒にやるなかでその嫌味な部分がなくなれば、素晴らしいダンサーになるだろうなと予感があったし、なにより、まだ25歳くらいなのに踊りはずば抜けてうまいから、プロとして舞台をご一緒したいと思ったの。

:ありがとうございます……!(背筋を正す)

夏木:けれど始まってみると、他の仕事で忙しくてワークショップにはあまり来れない。そのくせ来たら人一倍踊れるのよね。周りからしたら悔しいんだろうな、「この人はこのままで大丈夫かな」と思ってた(笑)でも最近ではチームリーダーもしてくれているし、この5年ですこしは大人になったから、信用してます。そもそも最初は、なんで私の「印象派」のオーディション受けたの?

:イギリスでのダンス留学から帰国して、いろんなオーディションを受けていた時期だったんですけれど、「この人のところに行ったら面白いことが起こるかも」という予感があったんです。というのも、実は10代の頃にマリさんの踊りを一度見ていたんですよ。

夏木:そうなの!? どこで?

:テレビなんですけど、早朝6時くらいの生放送で、白い衣装で踊っていたんです。それをアナウンサーさんたちがにこやかな笑みで見つめているという不思議な光景で、「この人は朝早くからなにをやってるんだろう、面白いなあ!」と印象的でした。

夏木:ああ〜、そんなこともありました。

:その時の僕みたいに、ふとテレビを見て「面白いな」と思う人がいるかもしれない。その人が「あ、今度舞台があるんだ、観に行ってみようかな」と劇場に足を運ぶかもしれない。そうやって月に1度でも、大切な人と舞台やライブに出かけてからディナーをする日があれば、もっと世の中が楽しくなると思うんです。

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自分のお金をかけて、なぜ作品を作るのか


竜:
マリさんは僕も参加させていただいている『印象派NÉO』というシリーズでご自分の舞台をつくり海外公演もしていますよね。お忙しいなか、なぜ作品をつくるんですか? 

夏木:それ、よく言われます。「なんでわざわざ貯金をはたいてそんなことをやるんですか? もらった仕事をやっていれば楽チンなのに」って。でも私にとっては楽しいことだし、生きがい。

それにせっかく芸能の仕事をしているのであれば、誰も見たことないビックリするような舞台を創って、観にきた人に衝撃を受けて欲しい。たいへんだけど何とかやってみたい、と思ったのが93年。その頃、私はふつうのミュージカルや演劇に熱中していて、「ブロードウェイに出たい」なんて思ってた。でも心のどこかで「私にはミュージカルは無理だろうな」とも思っていて、そうこうしているうちにコンテンポラリーダンスに出会ったの。「これならバレエもジャズも踊れない私でもなにか表現できるかもしれない」と思って、ダンサーではないのに無謀にも挑戦してみて、ここまで来ました。

竜:自分で作品をつくることって、すごく苦しいですよね。僕も毎回吐きそうになりながら考えます。それでも続けているのは、とことん考えたり、無我夢中で必死になることって、人生の時間をかける意義があるからだと思います。

夏木:そう、その喜びに出会ってしまった人生なら、やるべきよね。もう抜け出せないし、抜け出さなくていいでしょ。そうやって自分や作品と向き合うことで、新しい自分も発見するしね。私、コンテンポラリーダンスに出会って悩むようになりました。どうして動くのだろうと。

あと、踊れないのにダンスに挑戦するという無謀なことをやってるから、怖がらなくなったのね。「恥ずかしい」とか「踊れない」とか言ってる場合じゃなくて、とにかく一歩踏み出す。

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コンテンポラリーダンスって何?


夏木:
でもさ、コンテンポラリーダンスって一般的にはあまり知られてないじゃない。いったい何なの?

竜:うーん、人によってやっていることが違うので説明するのは難しいですよね……バレエのように鍛えられたテクニックを必ずしも見せなきゃいけないわけでもないし、決まった型(カタ)やスタイルもない。激しく動く人もいれば、ずっと立っているだけの人もいる。「こうでなければいけない」という決まりは全くないダンスですよね。

一方で、僕がもともとやっていたジャズダンスや、マリさんのベースになっている演劇、ほかにもバレエやヒップホップには、基礎があります。基礎的なステップなどのテクニックを身につけることは、どうやって表現するかという“正解”を学ぶことでもあります。でもコンテンポラリーダンスには正解がありません。すでにある“正解”に疑問を投げかけ、壊し、“自分なりの正解”を探す試みそのものが、コンテンポラリーダンスなんだと思います。

夏木:素敵ですね。その人なりの“正解”を求めているから、コンテンポラリーダンスには踊り手の生き方が見える。「素敵な人だな」と感じる人は踊りも素敵だし、「この人の踊りあまり好きじゃない」と思ったら仕事でもプライベートでも会う機会がない。生き方、考え方、暮らしぶり……その人そのものがパフォーマンスに出るのですね。

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アーティストが海外に行くということ


竜:
今回のクラウドファンディングでは、フランスに渡航するにあたっての資金を集めています。マリさんもニューヨークにいた経験がありますが、日本のアーティストが海外に行くことについてはどう思いますか?

夏木:絶対に海外に行くべき。絶対に。なぜなら、文化が違うところ、食べ物が違うところ、寝る環境が違うところに行くと必ず新しい発見があります。これまでと違った作品ができる。それは表現を深く豊かにしますね。

竜:そうですね(笑)留学したり移住したりするダンサーは多いです。ダンスは言葉がいらないから、日本でなくてもできる。

夏木:優秀な人が海外に移り住んでしまうことは理解できます。欧米の方がダンサーにとっての環境もいいし。都市が劇場やダンスカンパニーを持っていて、市や町から援助を受けて作品を作っている。日本ではほぼすべて自費ですから、バイトしながら踊っているダンサーなんて、たくさんいますしね。

竜:僕はありがたいことにダンスに関わることだけで生計を立てていられるけれど、若いダンサーほど経済的には厳しいと思います。だから海外の環境を見ると、羨ましい。今回みたいにフェスティバルで賞を獲って海外に行けることになっても、自分でお金を集めなくてもいい(笑)

夏木:ダンスのためにかけられる時間も労力もまったく違いますね。そうなると、どんどん欧米と日本の作品レベルの差が開いちゃう。やっぱり観たこともないような「なんだこりゃ!」と驚く舞台というのは、どちらかというと海外の作品の方が多い。

竜:たぶん日本の場合、70点くらいの無難な作品ができやすい環境なんじゃないでしょうか。公演について何にも決まってないのに告知のためにタイトルやビジュアルを決めないといけなかったり、一度失敗すると仕事がもらえなかったりする。

でも海外では、何度でもチャンスがあるから思いきり作品づくりに挑戦でるんですよね。だから超有名なプロでも“ものすごい駄作”をつくることもあるし、時には衝撃の一作が後世に残る傑作になったりする。

夏木:日本でも、刺激的で衝撃的な作品を創りたいですね。

 

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ダンスでクラウドファンディングする意味


竜:
こうやってクラウドファンディングしていますけれど、極端な話、自分で借金をする事だって可能です。

夏木:そうだけど、それは違う気がします。アーティストが自分のお金で好きなことをやるだけなら、ただの趣味だし、文化は成長していかない。企業なり行政なり社会なりがアーティストを支援することが、「世の中にアートが必要なんですよ」という意味になります。

竜:そうなんです。クラウドファンディングを行うのは、いろんな方たちが直接ダンス創作に関わるきっかけになるから。ふだん踊らない人にも支援という形で参加していただくことで、『AFTER RUST』が自分ひとりだけの作品ではなくなり、社会の中に存在する意味が出てくる。だから僕は、「この作品を支援してるんだ」と誇りに思ってもらえるような作品をつくるために頑張ります。そうやってダンスをもっと盛り上げていきたいし、その魅力を多くの方に知っていただきたい。だからなんとしてでも、クラウドファンディングを成功させたい。

夏木:期待しております。クラウドファンディングでいろんな人たちに支援してもらうって素敵なことです。

竜:わかりやすいですし、僕も人と繋がってやっていきたい。自分ひとりでできることには限界があります。このプロジェクトでもマリさんはじめいろんな方に助けていただけることで、視野も広がるし、できることも広がるし、ダンスが社会に存在する意味も広がるなと実感しています。人の力というのは、やっぱり大きいです。マリさんも「One of Loveプロジェクト」という途上国支援をされていますが、きっと近い考えでしょう?

夏木:今日もそのTシャツですが、“支援”というとややこしく聞こえるかもしれないけど、要は、多くの方に関わっていただくことで継続的になるし、気持ちを共有できる喜びがあります。竜くんが今回みなさんの支援をいただいて作品をつくることで、みなさんも新しい作品が観れるチャンスが手に入る。そうやって世の中が豊かになるんだと思う。ぜひ竜くんたちの世代には今後、「なんじゃこりゃ!」と驚くような作品をつくって欲しいです!

竜:頑張ります。7月にはフランスでつくった作品を持って帰ってきて、2019年2月に日本で公演します!

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プロフィール


夏木マリ

73年デビュー。80年代から演劇にも活動の場を広げ、芸術選奨文部大臣新人賞などを受賞。93年からコンセプチュアルアートシアター「印象派」で身体能力を極めた芸術表現を確立。09年パフォーマンス集団MNT(マリナツキテロワール)を立上げ主宰。ワークショップを通じて後進の指導にも力を入れ、その功績に対しモンブラン国際文化賞を受章。同年、バラと音楽の支援活動「One of Loveプロジェクト」を設立。毎年秋には世界文化遺産 清水寺[経堂]にてパフォーマンス『PLAY×PRAY』を文化奉納。17年春、「印象派」の新作公演「印象派NÉO vol.3 不思議の国の白雪姫」東京・京都・パリのルーヴル美術館で開催し成功を収めた。18年にデビュー45年、印象派25年、One of Loveプロジェクト10年、「PLAY×PRAY」5年を迎える。6作目となる書籍「好きか、嫌いか、大好きか。で、どうする?」が講談社より発売中。主演映画「生きる街」(監督: 榊英雄) が好評公開中。待機作に「犬ヶ島」(5月25日公開予定 / 監督:ウェス・アンダーソン)、「Vision」(6月8日公開予定 / 監督:河瀬直美)。

鈴木竜
英国ランベール・スクール卒。在学中、ランベール・ダンス・カンパニーの全英ツアーに抜擢されイツィック・ガリーリの作品を踊る。卒業後、フェニックス・ダンス・シアター、アクラム・カーン、シディ・ラルビ・シェルカウイ、フィリップ・デュクフレ、テロ・サーリネン、インバル・ピント/アブシャロム・ポラック、トリスタン・シャープス、平山素子、近藤良平、小尻健太、キミホ・ハルバート、夏木マリ、西島千博、舘形比呂一などの作品に参加。

振付家としても第3回セッションベスト賞を受賞したほか、横浜ダンスコレクション2017コンペⅠにおいて、「若手振付家のためのフランス大使館賞」「MASDANZA賞」「シビウ国際演劇祭賞」を史上初のトリプル受賞するなど、大きな注目を集めている。(www.ryusuzuki.com

 

DANCE WORKS
21年前に渋谷の宇田川町で始まった、 業界初の経験者専門ダンススタジオ。「本物のダンス」にこだわり、ダンサー育成、 スタジオ作り、 ハイレベルな舞台を行う。(https://danceworks.jp

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